を求めて。①
あと一分で授業終了の時間だ。
教室を見渡せば13人の生徒たちが社会科の課題に取り組んでいる。
・・・・・・終了時間ちょうどだ。
しかし、生徒たちは課題に集中していて、皆、下を向いてシャープペンを動かしている。
私は一度、深呼吸をして声を出した。
「はい、終わりだよ。忘れ物をしないでね」
生徒たちが荷物を片付け始めたのを見て、私は重たい授業道具を持ち上げた。
講師室に戻って、机の私スペースを見ると、前の席には今日も山下先生がいる。
座る場所は自由なのだが、大体いつも同じ場所になるものだ。
この山下先生は学習参考書も執筆している方なのだが、偉ぶったところがない。
さらに、ユニクロのスーツを着ているところにも好感が持てる。
「おつかれさまでーす」と大きすぎず小さすぎずのバランスをとって挨拶をする。
ももちゃんは猫である。
客観的に言って、いや、控えめに言って「美猫」である。
小さな頭。